デザイン思考とは何か、あるいは思考のダンス

私は高校、専門学校、大学……と、ずっとデザインに関わる生活をしてきた。それも、Adobeのソフトを使い、カメラを使い、ときに手を動かしながら、生み出す側として。

 

ただ、デザイナーとして働く中で求められていたのは、あくまでデザイン案が最終的に求められたものが出来上がるまでのフローの中で発生する、「デザインの技術」だけだった。構造の中にただ組み込まれたデザインを行うことは、機械になったような気分になってしまったし、技術と体力さえあれば誰でもできてしまう仕事を自分が行うことに対して不安を感じてしまった。

 

デザインという言葉に惑わされ、翻弄されてきた。

 

職業としてのデザイナーとなることについて葛藤してるとき、気になっていたデザイン関係の書籍を読んでみようと思った。手に取ったのは躍進的なプロダクトを生み出してきたデザインコンサルティング会社IDEOのCEOとして知られる、ティム・ブラウン著の『デザイン思考が世界を変える』だった。

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この本の新しさは、デザインが技術中心でなく人間中心であるというところだった。

人々のニーズを想像するだけでなく、その内側に溶け込んでいくことで、無意識の不便さを解決する。つまり、人々が声をあげるニーズを満たすだけのものでなく、内なるニーズに気づき、それを作り出すこと。

 

デザインにおける技術は、いわゆるAdobeソフトを使用して制作をするような一元的な役割だけでなく、その思考プロセスー「収束的思考」「発散的思考」「分析」「綜合」にあるということが、実際のプロジェクトの成功事例を交えながら語られている。

 

”一世紀にわたる創造的問題解決の中で、デザイナーたちは「着想(インスピレーション)」、「発案(アイディエーション)」、「実現(インプレメンテーション)」を手に入れてきた。私が言いたいのは、現代ではこれらのスキルを組織全体に広める必要があるということだ。特に、デザイン思考を、”上流”、つまり戦略的な意思決定が下される重役室へと移動させる必要がある。今日では、デザインはデザイナーに任せておくには重要すぎるのだ。”

 

その思考を働く人たち全員が持つことで、デザインだけでなく、プロジェクト、ひいては組織の構造自体もより躍進的で新しいものへアップデートさせて行くことができる。

 

近年急速に普及しているUI(User Interface)/UX(User Experience)という言葉がある。

UIはユーザーインターフェース、つまりフォントやイラストなどの画像全てのデザイン自体を指し、UXはユーザーエクスペリエンス、使用者がその製品やページで得られる使い心地や感情の動きなどを指している。本書で述べられているそのUX、つまり”体験”は共感である。

 

 

 

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4つの思考の中でダンスすることによって、「経済的実現性」「有用性」「技術的実現性」などの制約を受け入れながら新しいデザインの可能性を模索することができる。

 

 

組織全体で、デザイナーが持つ技術的な側面だけでなく、その思考をプロジェクトに関わる全員が共有する。本来は作る側でだけない、”消費者”という役割だけを担うユーザーでさえも。

 

”デザイン思考家は、「消費者に対する私たち」であっても、「消費者を代表する私たち」であってもならない。「消費者と手を取る私たち」でなければならないのだ。”

 

彼が述べるのは、プロジェクトの可能性を模索する中で生まれたアイデアは失敗、ではなく枝分かれした道のひとつであるということだ。

メソッド的なものは何一つこの本には書かれていない。ただ、メソッドを作り出すための思考についての多くの実例が記されている。理想論的な話のように感じる部分もあるが、デザイン的思考に近づくために多くの人に読まれてほしい本だと思う。